独立開業は恐いもの
料理人が陥る自分自身のワナ 

2006_12独立開業…。この4文字に憧れ、焦って行動してしまう人が多く、取り返しのつかなくなったケースをこれまで多く見てきています。つい先日も、開業して1年足らずのお店からの相談があり、現地まで行ったところ、「あ~、やっちゃったんだ」という思いにさせられました。

長年料理屋で修行し、その店の接客担当の女性と結婚、そして、150万円とわずかな自己資金で始めた居酒屋でした。

きっと料亭の厨房で修行していたのだな…、30歳半ばのご主人の立ち居振る舞いを見て、私は直感的にそう理解しました。「俺は一所懸命に料理の勉強をしてきたんだ。先輩に叱られ歯を食いしばって頑張ってきた。

そんな俺が出す料理なんだから旨くて当然だ。」そんな自信から、憧れであり自由になれる独立を急いでしまったのです。結果、毎月の売上げは100万円足らずで、開店当時の借金を抱えたまま、結局このお店は閉店に追い込まれてしまいました…。

このケースでいけなかったことは、店主の腕に対する過信だけではありません。料亭仕込みの料理が居酒屋のそれに合致せず、つまり居酒屋のあり方自体を理解できていなかったこと。接客を奥様に任せきりにし、自分は厨房内に閉じこもり、ただ料理を作るだけで「おもてなし業」の大切さがわかっていなかったこと。ひいては、わざわざ来店し、お金を支払って下さるお客様への感謝の気持ちがなかったことです。

こんな人ですから、従業員をしっかりリードし、楽しい職場を作っていこうとする思いなどもありません。つまり、独立開業したのにも関わらず、経営者ではなく、職人の意識のままだったということです。

さて、独立開業して成功するためには、大切なことが幾つかあります。

まずひとつ目は、「物件探し」です。自分の技量や、店の規模、業態による立地、ターゲットに対しての立地など、慎重に決めなければなりません。物件の目処がついたら賃貸物件の場合、必ず大家さんと会い、飲食業に対し理解のあるかたかどうかを確認して下さい。

二つ目は、経営者になるための勉強を沢山して下さい。

三つ目は、料理人の場合、自分の料理に溺れず、繁盛店の料理を研究して下さい。

四つ目は、ちゃんとお金を掛けてた店づくりをすること。「お金を掛けないで良い店を!」と依頼されることがままありますが、そうして開店したお店は、いずれ改装などをするうちに“安物買いの銭失い”になってしまうものです。マイホームにはお金を掛けられるのに、利益を生み出すお店になぜしっかりお金を掛けようとしないのでしょうね?